「どうして部下はこんなにも動けないんだ?」「思ったように人は動かない」と思ったことありませんか??
部下や周りが思うように動かないのは他者が悪いのではなく、あなたが教え方を知らないために動かせていないのかもしれません。
教える側も「教え方」を学び、部下に対して評価とフィードバックを行う時間を定期的に行いましょう。それでも動かない場合は、仕事以前の部分でコミュニケーションが取れているのかを確認しましょう。
気づき
教える相手に責任転換しない
トップアスリート(日本代表等)でない選手層のトレーニングをみていると、度々思うようにいかないことがあります。
- 選手自身が全力を出し切れていない
- 集中すべきところで、集中しきれていない
- 言った通りに身体が動かない
など。
「なんで、思うように動かないんだ??」と度々考えます。忙しくて疲れている時には、イライラすることさえありました。
本書には、部下が思うように動かないことに関して以下のように書いてあります。
教え手が「教え方」を知らない。
チームの成果というのは、そこに所属している人たちの行動の積み重ねによって成り立っているからです。あくまで重要なのは一人ひとりの「行動」であって、メンバー一人ひとりの性格や価値観は関係がありません。
「望ましい行動」が継続できない理由はたった2つだけ。
・”望ましい行動”のやり方を知らない
・継続の仕方を知らない
教える側の責任ですね。
中学生を教えていると実感します。頭で知っていても、実行しない。言ったことが、「正しく理解されていないことが、常です」と言いたくなるくらいです。
ですが、教える側がきちんと伝わるまで、理解されるまで伝え続けることで、選手の行動が変わったことがありました。
人それぞれのアプローチがあるので、どんな言葉が選手に響くかは分かりません。あの手この手と試す責任が指導者にはあると感じました。
評価やフィードバックのための時間を事前にスケジュールに組み込む
評価やフィードバックを指導者の方は行っていますか??
私も仕事柄、測定したデータのフィードバックを行うことが多々あります。スポーツにおける望ましいフィードバック時間は以下のように書いてあります。
通常の状況では、コーチへのテスト結果の提示は、テストの72時間以内に行なうべきである。
そして、本書には以下のように書いてあります。
行動の「強化」は、その行動が行われた直後(60秒以内)に行うのがもっとも理想的です。(中略)行動分析の実験によって、その限度は最長2週間程度だということが判明しています。
両方とも短期間で評価・フィードバックを行うことが共通しています。
3日というとスポーツの世界の人以外からみると中途半端だな、もっと早くフィードバックできるだろ?と思うかもしれません。
たいたいチームをみている時には、数人〜数十人の選手をコーチは抱えます。トップアスリートであればかけられる予算もあるので、ハイクラスの測定機器を使用し、データ処理も比較的楽になってきます。とはいえ、陸上や水泳のようなデータを取る種目や体力測定などの際には、データの量が膨大になります。3日という一見長そうに見える日数でもフィードバックするコーチにとっては大忙しな3日間となるのが現実です。
2週間以内に評価やフィードバックを行わなければならないとなると、人によっては真っ青かもしれませんね。部下が多ければ2週間以内に全員の評価を行えないかもしれません。上司の仕事は、部下の評価だけではないからです。見方を変えると、上司が2週間以内に評価やフィードバックを行える人数が「上司が直接抱える適切な部下の人数」なのかもしれません。
適切な部下の人数を抱えたとしても、仕事が暇で何もやる事がないというのは中々ない状態です。ほとんどの人は、毎日仕事のすべきことを抱えているはずです。
忙しさを理由に部下とのコミュニケーションをはかる時間を確保しないのではなく、事前に重要な時間としてスケジュールに組み込んでしまいましょう。【時間ができたらやる】と思ったところで、その『いつか』はいつまで経ってもこない事を知っている人は、事前に時間を確保する重要性に気がついています。
時間が限られていれば限られているほど、事前に時間を確保し、削れるものは削っていきたいと思います。
動機や望ましい行動を具体的に把握する
選手へのトレーニング指導以前に、知っておいた方が良いことがあります。
- 選手はなぜこのスポーツが好きなのか?
- 将来どこまで目指したいのか?(部活動だけでいいのか?日本代表か?)
- どんな選手になりたいのか?
- 選手自身、何が足りないと考えているのか?
- プライベートで抱えている悩みがあるのか?
など。
スポーツスキルだけを教えるのであれば、上記のことを把握しなくても良いかもしれません。その例としてスキルを教えているビデオ教材が良い例でしょう。
選手の人としての成長や高い目標の達成となると、単にスポーツスキルを教えるだけでは乗り越えられない壁が存在します。その壁は選手によって様々ですが、たいて選手は「頑張っている」と自覚しているのに、思うように結果がでなくなることがあります。精神的にも強くなる必要がある時期です。今まで行ってきた事を振り返り、『正しい』と思っていたが目標に対して良い行動ではなかったものを洗い出し改めて行く作業が必要になります。
本書では行動のことを以下のように述べています。
一般的に「行動」というと、体を動かして行う行動やふるまいのことを連想しがちですが、行動科学においては、理解する、覚える、考えるといったことも「行動」として分類しています。
望ましい行動に改めていく時には、スキル指導以前の把握が必要になる時もあります。コーチは全国大会を目指しているのに、選手は毎回楽しければいい、きつく痛い練習はしたくなかった・・・など。
先ほどの評価やフィードバックのための時間と同様、限られた時間の中で後回しにされがちな部分です。
私も年間スケジュールを見渡して「いつなら時間が取れそうなのか?」難しいなら「どう時間を生み出すのか?」を考える作業が必要になります。
選手と話して初めて知る事も多々あるので、多くの時間を割けなくてもゼロにしたくないことです。
感想
【部下についての把握】を、どれだけの方々が行えているのか?と興味があります。
私がいる世界はスポーツですが、部活動やクラブで年に1回行えていればまだ良い方ではないでしょうか?こう思えるくらい選手の目標もしくはチーム目標のみコーチが把握しているだけで、もっと深いところでの理想像など把握していないコーチがほとんどのように感じます。
もちろん時間的な制約が大きいから、コミュニケーションをとる時間よりも戦術・スキル・体力アップのために時間が費やされるのでしょう。それで、全選手の目標やチーム目標が達成されるのであれば良いですが、全ての目標をクリアできることはほとんどありません。
コミュニケーションをとるようになって、次のステップにある「目標・現状の具体化、言語化」でも、またもや躓きます。
科学的なデータに基づいた練習メニューを選手に提供しても、特に年齢の低い選手は練習メニューがどう目標につながるのか?を理解できていない選手がほとんどです。選手のレベルが高いと、説明で理解できなかったことは「どういうこと?」「何故これをするの?」と意味を訪ねてきます。
コーチ側も、目標を達成するために、必要な要素をはっきりと選手に提示することができていないのでしょう。
勝負の世界に「絶対」や「100%」はありません。
それでも、100%に近い勝利に近づけることはできます。
強化・評価・フィードバック以前の部分で躓いているなと気づくことができました。
今回読んだ本の紹介
2)チーム編 教える技術 行動科学で成果が上がる組織をつくる!